崖の上のポニョ

少年は、崖の上の隔離されたような家と、ふもとの(老人ホームが併設された)保育園とを往復する退屈な日々を送っている。

少年にとって、人間の住むこの世界は、死に行くイメージに満ちた世界。
止まった時、変わらぬ日常。老人と子供で構成された世界。戦い続ける父親は常に不在だ。

海は少年の夢であり、外界であり、希望であり、父のいる場所(自らが進む場所)。
その外界からやってきた「異形」の者=ポニョは、海と人間とのあいの子であり、ひたすらに変化し、進化・成長していく。
その原理は愛。
愛の力に満ちた少女と出会い、少年の世界がはじめて生命を帯び始める。少年は自分の船で海へと漕ぎ出すことができ、若い男たちが力を合わせて難民を導き、赤子を伴った夫婦が現れる。にわかに物語の世界は「生」のイメージで満たされ始める。

そして少年が、変化を続ける異形である少女を受け入れ、
母親の管轄する変化の無い無害な世界を離れていく予感の中で、
物語は哀愁に満ちたハッピーエンドを迎える。

クライマックス、海の母と少年の母が、静かに語り続ける後ろ姿の意味は、
そういう観点から主人公が少女では表現しえなかったのだと考えると、監督の丁寧な演出にひたすら感服せざるを得ない。

子供がどう観るのかは正直よくわからない。
子供を持つ母親のための、悲しくもリアルなメッセージ。